「腰掛待合」の設計・施工
そう依頼されるお施主様がイメージされているのは、鎌倉や京都あたりでみる、茶席に入る前に待機する”腰掛待合“といわれるものでした。
さらに職人と相談して目指したものは”昔からそこにあったような、山の中に佇んでいるバス停のような味わい“です。
こういう建物に関われる機会はそうはありません。
職人さん共々、楽しんで作らせていただきました(特に親方の本領発揮、独壇場でした)。

樹の枝の間から垣間見る景色です。
桜の花が散り、地面一面が花びらで埋まりました。
屋根は自己主張を抑え、存在が軽く感じられるようにデザインしました。
風情を演出するには円窓は欠かせません。晒し竹を棕櫚縄(しゅろなわ)で編んで固定しました。
柱は手斧(チョウナ)といって古代から存在する(!)大工道具を使って真四角の柱をコツコツ削って、長年の風雪に耐えてきたような古柱を再現しました。
壁は骨材の大きな材料をコテで荒々しく、かつ繊細に…職人の感性が光ります(当初は庭の土を練り込む案もありました)。


庭に残された蹲踞を望むところです。
もともとあった石を役石のように置き、周囲を砂利で埋めました。
軒先から垂れる雨だれの音も楽しみです。
床、腰壁は杉の無垢板です。
左に見える小さな棚は庭にあった木の枝を使っています。
中にいると住宅街にいることを思わず忘れてしまいます。


柱を支える束石は、市場で流通している真四角なコンクリートの既製品では風情がありません。もともと庭にあった石を使ったような物を特注で加工しました。
束石を固定させる基礎も“洗い出し”という手法でつくり且つ、大地から自然に隆起したかのように丸みを持たせて周りとなじませています。
木、竹、石、土…自然素材で作られたものは私達の心を癒します。
花鳥風月と言われる自然の美しさを感じて生きてきた私たち日本人のこころに沁み込んでいくのは当然のことかもしれません。
