市川駅から歩いて5分。
4階建ての建築も可能な商業地域で3方を高い建物で囲まれている築60年の家の建て替えです。
新築では3階建てが当たり前になってきましたが、防火上等の制約が多く、木をそのまま表すことが困難です。
そこで2階建てにしながらも如何に光を取り込み、明るい空間を作れるか、そして木材をはじめとする自然素材をどうしたら効果的に使えるか、延べ30坪に満たない床面積(1・2階合わせて)の中で如何に開放的なリビングを作れるか、が今回の新築の課題でした。

日照があまり望めない1階には寝室を集めました。その間取り条件のなかで如何に魅力的な玄関ホールを作れるかがポイントです。
今回こだわったことの一つが光です。
まずは自然光。2階のLDKに極力自然光を取り込めるような間取りにし、その光を階段から1階におとすことが必要です。そのために小さいながらも吹き抜けを作り(正面ニッチの壁の上部:光の井戸のイメージ)、階段も踏み板のみの階段としさらに格子やスノコを作って光の落とし方にも工夫をこらしました(H27.12.14付けのブログも見てください)。
次に照明の光。一般的には照明は“この広さの部屋にこの照明器具では十分な明るさか否か”で決めることが多いようですが、私は必要に応じて敢えて明るくないところも作ります。
この画像で廊下にも明るいところとそうでないところがあるのがお分かりでしょうか?
光の明暗は空間に変化、奥行を与えます。
3方(北、東、南)を3階建ての建物に囲まれていますが、2階建てであっても光や風を取り入れる為の間取りを探しました(近隣の建物や離れを模型で再現し、特に午前の光が入る為にどうしたらよいかをいくつもシミュレーションを作って検討するのです)。
撮影時は曇天ではありましたが、十分な光が確保できたのではないでしょうか。
お施主様から折角お声を掛けていただいたのですから、その空間の可能性を極力探っていきたいのです。


LDKの吹き抜けにロフトを作りました。
ロフトを作っても上るのに梯子であったりすると、片手に荷物を持って命懸け?で上ることになり、また何とか上ってもあまりの暑さに耐えられなくなってただのお飾り空間になることが多いです。
そこで階段で上がれるようにして、複数取り付けたロフトに面する窓を開ければ風の通り道になるように計画しています。
ロフトの一角にはカウンターを設け、秘密基地というかアジトを作りました。
空間はつながっているけどプライバシーを確保するということは円満な家族構成のためにはとても大事なことなのです。
キッチンは白で統一しました。奥で発光しているかのようにみえる扉(ケシガラス調のアクリルパネル:乱反射するため、透明よりも明るい)を開けるとそこはランドリールームになっていて、そこからバルコニーにも出られます。床暖房はキッチンにもランドリールームにも入れており、奥様の動線をサポートします。


洗面化粧台は造作としました。住宅では2帖程度のスペースに洗面化粧台と洗濯機を並べることが多いのですが、そうなるとどうしても“生活感”が溢れてしまいます。
洗濯機をランドリールームというバルコニーとキッチンに面した部屋に置き、そこまでに脱衣かごをもって移動するように計画しました。
3方を3階建ての建物に囲まれて、残りの1方は道路となります。プライバシーを考えるとこちらを開放的にすることはできません。ストイックに小さな窓をリズムよく並べました。
木製玄関戸の前にはゆったりとしたポーチ。この空間のおかげで閉鎖的にならないながらもプライバシーが確保でき、雨の日でも濡れずに傘をたため、紫外線や雨水から木を守ります。外壁は手作り感の残る左官としましたが、ノンクラック通気工法という建物全体で呼吸ができ且つ地震に対してもクラック(ヒビ割れ)の入りにくい特殊な工法を選びました。


外壁は手作り感の残る左官仕上げとしましたが、ノンクラック通気工法という建物全体で呼吸ができ且つ地震に対してクラック(ひび割れ)の入りにくい特殊な工法を選びました。
また、ファサードは特徴のあるデザインにするため、ストイックにまとめました。
夜、外に出ようと玄関扉を開けると2階を支えるポーチの壁が目の前に現れます。
前面道路とのプライバシー確保のためでもあるのですが、照明、壁の表情、無垢のカウンターの組み合わせで非日常性を演出しました。
お施主さんが、仕事が忙しくて新婚旅行に行く時間がなかったことを聞いて、それならばどこかヨーロッパのレストランやバーを思わせる雰囲気にしようと考えました。

