緑豊かな閑静な住宅街での新築戸建て
今回は、周辺は緑豊かで閑静な住宅街という環境での新築のご依頼です。
施主のご夫婦からは、料理とお酒が楽しめること、小さくても趣味(アメリカアンティーク収集)のためのお部屋があることぐらいのご要望でしたが、一方で地域特有の”しばり“として緑化面積の確保や外壁後退距離、高さ制限等の建築条件があり、それらの制約をむしろ設計でより活かす方向で計画ができないか?
そんなことをテーマに考えながら、計画をスタートしたお仕事です。

緑を望むキッチン。
厨房からでも、ホームバーカウンターからでも、勿論ダイニングからでも。ダイニングの上部は高天井。その真上の2階の寝室は床レベルの異なるスキップフロア。壁はパインの羽目板と珪藻土。右端はパインの無垢扉、奥にはダッチオーブン機能の付いた薪ストーブが座っています。
朝、豊かな気持ちをもって玄関から出ていき、夜も豊かな気持ちで玄関に帰る。人生を豊かにする大事な場所がエントランスです。住宅街にあってもまるで別荘に来ているかのように演出しました。
レッドシダーの軒天と羽目板、イぺのデッキと手摺、床に置いてあるのはストーブ用の薪です。


2階は随所にスキップフロアを構成しています。2階に上がりきった先にも階段があり、4段更に上がると1帖のバルコニー前広場になります。(読書を楽しむスペースでもあります。)そしてそこはそのまま主寝室ともつながっていて、その分、下のリビングの天井も高くすることができました。
2階のバルコニーから振り返ると廊下はこのようになっています。奥のブルーの壁はトイレです。扉を開けても便器が隠れるくらいに若干細長く計画しています。夏の南北通風の確保に努めました。


4帖の洗面脱衣場です。既製品の洗面化粧台を使いながらも造作カウンターや造作棚で自然にまとめました。細長く通風ドアにつながる空間は室内干しに備えての計画です。
薪ストーブの登場によってお酒と料理の好きなご夫婦に新しいレパートリーが増えました。
自ら作った燻製で炎を眺めながらウィスキーを口にする贅沢な時間を楽しんでいただきたいものです。


外壁の後退距離をしっかり取らなくてはならないのなら、寧ろ玄関へのアクセスを楽しんでもらおうと、アメリカアンティークの趣味室のデザインと絡めて特徴的な外観としました。ウッドデッキに続くステップは枕木にマサドミックスといって土の表情を持ちながらも水溜りを作らず、流れ出さない舗装材を使っています。
スキップフロアの裏テーマが“空に続く階段”でした。日中は青空を目指して上がっていく、夜は月を目指して上がるときもきっとあるでしょう。日に何度も上り下りする階段が楽しければ、毎日が楽しくなってきます。(階段の手摺は鉄製で、奥の薪ストーブの黒とのバランスをとりました。)
