構造はロマンだ!

お正月にTVを見ていたらAQホームさんのCMが流れました。

日本の木造建築で最高の8階建ての建物がAQホームさんの本社ビルです。実は昨年、

とある勉強会(NPO法人木の建築フォラム主催)で見学させて頂いたのですが、

構造設計をされたのは東大名誉教授の稲山先生です。

これからの時代は木造の中層、高層建築が増えていくのだと思いますが(法律が後押しをしていますが、まだまだコストを含めて業界では様子見の段階のようです。)

私自身も稲山先生が執筆された『中大規模木造建築物の構造設計の手引き』を少しずつ少しずつ読み進めております。

少しずつ少しずつと書いたのは建築基準法上、例えば木造4階建て以上になると構造の検証方法が全く変わってしまい、目新しいことばかりということもありますが、それとは別の理由もあります。

今回はそのお話。

例えば『中大規模木造建築物の構造設計の手引き』の中ほどに

『面材張り大壁の詳細計算法』という章があります。

その文章を読んでいくと、この設計法のベースになっているのは

村上雅英先生の『任意の釘配列で打たれた面材等の弾塑性挙動の予測式』という日本建築学会構造系論文で発表されたものだと記されています。そう書かれているからには読まなくては理解ができません。早速ネットで検索して読んでみました。(大半はわからないことばかり)すると論文の冒頭、この研究のきっかけは阪神・淡路大震災のあとに行われた実大振動実験等で建物全体の耐力に対する筋交いの耐力負担率は少なく、腰壁、垂れ壁等の雑壁含む面材壁の耐力負担率が大きいということが、建築技術1997年9月号;大橋好光先生監修『特集 木造住宅の構造設計の基礎知識 「実大振動実験」及び「軸組構法住宅の実大水平加力試験」』にあるのだと書かれています。

(おっ!30年前の大橋先生!勝手に私が恩人と思っている大先生)それはネットで見つからなかったので、国立国会図書館に行って30年前の建築技術9月号をコピーをして読むことになります。

そこには宮澤健二先生の「実大振動実験」槌本敬大先生の「軸組構法住宅の実大水平加力試験」が掲載されているのです。更にそこには参考文献として〇〇先生の○○・・・から引用と書かれていて・・・。

というように、『中大規模木造建築物の構造設計の手引き』の中の1行を読むのに大変な長旅になるのです、それが“少しずつ少しずつ“の理由なのです。

そしてたった1行書かれていることを理解しようとして読み進めるうちに2つの大きな感動を受けることになりました。ミクロの感動とマクロの感動。

意味わかりませんよね。

ミクロの感動

例えば村上先生が、構造壁扱いされていなかった壁(雑壁)の強さすら研究の対象にしようと、即ち『任意の釘配列で打たれた面材等の弾塑性挙動の予測式』のことですが

それを私の足りない頭で無理繰り読もうとしますがやっぱりよくわかりません。ただわかるのは

ある仮定を作り(力学モデルを作り)、その理論・計算式を仮定し、実験を数多く行い、修正をし、妥当性のある理論と計算式を導き、精度の検証も行うことによってこれからの性能型耐震設計法に対応するための実用的手法が提示されるに至った、ということです。

意外に思うかもしれませんが、耐震診断士とは講義を1回受けただけで資格を貰えます。

内容を理解できていなくとも資格を貰えます。

診断士は耐震診断時に現場でそこの壁が石膏ボードであれば所定の壁倍率を当たり前のようにただソフトに入力していくだけで自ずと計算は進んでいくのですが、そこに至るまではこのような実に地味で気の遠くなるような研究をひたすら続けてきた先生方のお陰で初めてできるようになったのだという感動なのです。

マクロの感動

そして阪神淡路大震災から凡そ30年、そういった研究を数多くの先生方が発表されて耐震手法の計算が進み、例えば熊本の地震(震度7が1週間で2回というそれまで全く想定していなかった地震)においても耐震強度が○○の家屋は殆ど被害を受けなかったとか、前述のように木造でもビルのような8階建ても作れる(作れるということは大地震にも耐えられるように設計することができたということです。)ようになるという、まさに研究の蓄積によって初めて今の社会ができているということに改めて感動するのです。

以前中島みゆきの“地上の星“がNHKのプロジェクトXで使われていましたが、まさに誰も気付かれることのない地上の星なんだと思いました。

先生とは先に生まれるから先生というのではなく、先(未来)を生きる(切り拓く)から先生というのかな、と考えずにはいられませんでした。

やはり、構造はロマンだ!

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